美容業の施設数は、厚生労働省が公表している平成27年度衛生行政報告例によると、24万299施設となっており、対前年比2,774施設増加しています。理容業が減少傾向にあるのに対して美容業は直近数年は右肩上がりで増加しており、それだけ競争が激しくなっていると思われます。
皆さんが日ごろ利用しているコンビニエンスストアが約5万6千店であることから、いかに美容施設が多いかがわかるかと思います。
そこで美容業開業のために考えなければならないことについてまとめました。
目次
1.美容業開業の形態は?
美容業を仕事にしたい、独立したいという方々は多く、施設数の増加をみても明らかです。開業するときに法人にすべきか、フリーランスとして独立すべきか悩まれる方も多いと思います。
開業の形態としては以下のものがあります。
個人事業主vs法人
自宅兼美容室vs自社店舗vsフランチャイズ(のれん分けを含む)vs面借り
2.個人事業主か法人か
開業するときに、個人事業主とするか法人化するか悩むところだと思います。
どちらにするかはメリット・デメリットをふまえて決めましょう。
個人事業主のメリット・デメリットは、反面法人のデメリット・メリットになります。
2.1 個人事業主のメリット
・開業するときの手続きは税務署へ開業届を提出するだけですので手間がかからない。法人設立のための手続きが煩雑で20万円から30万円の設立費用がかかる
・経理処理や税金計算などが事務負担が法人よりも軽減される
・社会保険への加入義務がないため負担が軽減される(もっとも個人として国民健康保険料と国民年金保険料の支払いはあります)
2.2 個人事業主のデメリット
・法人よりも信用力が低く、金融機関からの融資や取引先との取引ができない場合がある。
・従業員を採用しにくい(応募が集まらない)
・税額控除や経費の損金算入、欠損金の繰越しなど税務上のメリットが低い
・事業所得が多くなってくると、累進課税制度をとっている所得税の方が税金負担が重くなる
3.美容業の事業形態はどうするか?
では収入をどのような事業形態で得るかについてはどうでしょうか。
ここでは、自宅開業、自社店舗、フランチャイズ、面借りについてみていきましょう。
3.1 自宅開業
自宅開業によるメリットは何といっても、イニシャルコストが抑えられることでしょう。自宅以外に店舗を借りるとすれば、敷金、礼金、仲介手数料、家賃がかかることはもちろんスケルトンで借りれば、一から内装工事を行わなければならないので、設備工事費も多額になります。
その点、自宅であれば賃借にかかるコストを抑えることができますし、設備工事も抑えられるでしょう。
一方で、仕事とプライベートの区別がつけづらくなったり、やはり立地という面でデメリットになってしまう可能性があります。
紹介やご近所さんのみをお客様のターゲットとするのであれば、立地は気にする必要はないかもしれませんが、広く集客したい場合には店舗立地が重要になります。
3.2 賃借店舗
賃借店舗の場合は、賃借コストや設備工事費が多額に上るため、資金力が必要になってきます。
初期投資を抑えたい場合には、美容室の居ぬき物件を探すことも考えられますが、前の美容室が廃業又は移転したということは、例えば立地が悪く視認性に劣るとか、近隣に有力な美容室があるなど何かしらの理由があるはずで注意する必要があります。
また、初期投資は抑えられたけど、いざ開業してみると当初想定していなかったコストがかかってしまったなどということもあるため、コスト計画はたてておく必要があります。
しかし、複数の店舗を吟味することができるため、自分にあった店舗を見つけることができる可能性があります。
3.3 フランチャイズ(のれん分け)
初期投資やランニングコストを抑えたい場合には、フランチャイズという選択肢もあります。
フランチャイズの場合は、開業や経営のノウハウを提供してもらえるので、経営に関する知識がなくても運営していくことができます。また、様々なサポートをしてもらえますし、ブランド力があれば集客にもメリットがあります。
しかし、ロイヤリティを支払わなければならなかったり、経営マニュアルがあるので独自性を出しにくいなどのデメリットもあります。
3.4 面借り
面借りという働き方、最近増えているようで個人事業主の方から相談を受けることが多くなっています。
個人事業主として美容室と契約を結び、面(鏡)を時間制でレンタルする方法と売上歩合で報酬をもらう方法があります。
美容室側としては時間制よりも売上歩合の方がコストを抑えられますし、時間制だと時給制のパート従業員とほとんど変わらないため、主流は売上歩合で報酬をもらう方法でしょう。
これは美容室側にとってもメリットがありますし、個人事業主としても自分の都合に合わせて自由に仕事をすることができますし、設備投資などのコストもかからないため、今後広がっていくかもしれません。
4.まとめ
美容業を開業する方法はいろいろあります。
それぞれメリット、デメリットがありますが、ではどの選択をすればよいかということになります。
最終的には自分がどのように事業を行っていきたいか、目標は何か、開業するにあたって自分に足りないものは何か、ということをふまえて開業する方法を考えることをお勧めします。

公認会計士・税理士
東京をはじめ首都圏の店舗経営者に会計、税務サービスを提供しているほか、店舗経営に関する様々なアドバイスを行っている。
経営分析による改善活動を得意としている。