個人事業主の事業所課税って知っていますか


税金には様々なものがありますが、あまり知られていないものとして事業所課税というものがあります。事務所・事業所・家屋敷課税(以下、「事業所課税」という。)といわれることもあります。

個人の方が店舗を設けて事業を始めてしばらくした時に、市から納税通知書が送られてきて、“これは何ですか?”って質問されることがよくあります。

それほど認知されていないものですが、店舗経営をされている個人事業主が知っておくべきこの事業所課税について解説します。

1.事業所課税って何?

事業所課税とは、個人事業主の居住地以外に事業所等を有する人に、市区町村民税・都道府県民税の均等割額を課税するものです(地方税法第24条第1項第2号、地方税法294条第1項第2号)。

これは、事業所のみならず、家屋敷も該当します。

ではなぜこのような税金が設けられているのでしょうか。

この税金は、個人が店舗、事業所、住宅等をもつことで、その自治体から行政サービス(ゴミ収集、道路維持管理、消防・防災など)を受けているため、一定の負担を求めようというものです。

したがって、建物等を所有することに対して課税される固定資産税とは別ものです。

1.1 該当する家屋敷

家屋敷は、自己または家族が居住する目的で、居住地(住所地)以外の場所にある住宅で、自由に居住できる状態にある建物のことをいいます。自己所有でない場合も対象となります(別荘、別宅マンションなど)。単身赴任の場合は注意が必要です。

ただし、他の人に貸し付ける目的で所有しているものや、実際に他の人に貸し付けているものについては課税の対象とはなりません。あくまでも居住目的の場合が該当します。

家屋敷についてはその他細かな論点がありますが、以下では、個人事業主が事業目的で設けた事務所・事業所についてのみ記載します。

1.2 該当する事務所・事業所

事務所・事業所は、個人が事業を行うために必要となる設備で、継続して事業が行われる場所とされています。自己所有の場合は当然ですが、他の人の所有で賃借している場合も該当します。

私たち税理士や公認会計士などの士業が居住地以外に事務所を設ける場合は当然該当しますし、飲食店、理美容室、小売店などの店舗も該当します。

ただし、事業所を併設しない倉庫など、単にモノを保管しているだけの場所や一時的に使用する仮事務所については該当しません。

法人の場合でも本店以外に店舗や事業所を設けて事業を行っている場合は、所在する自治体から地方税が課されますが、個人事業主にも法人と同様に行政サービスに対する応益負担を求めようというものです。

2.課税対象となる個人事業主

では居住地以外に店舗や事業所を有するすべての個人事業主に対して課税されるのかというとすべてではありません。次に課税対象となる人、ならない人について見ていきたいと思います。

2.1 課税対象となる人

課税対象となる人は、次のすべてに該当する場合です。

  • 1月1日現在、事業所がある自治体に住民登録がないこと
  • 前年の合計所得金額・扶養人数等が課税基準に達していること
  • 事業を行う目的で事務所又は事業所を有していること

ここで自治体の定義ですが、横浜市などの政令指定都市の場合、事業所課税では区を一つの自治体とすることとされているため、例えば同じ横浜市内に居住地と事業所があったとしても区が異なるときは課税対象となります。

2.2 課税金額

標準税率は5,000円(道府県民税1,500円、市町村民税3,500円)ですが、自治体によっては超過課税を行っているところがあり、おおむね年額5,000円~6,200円程度です。

2.3 二重課税にならないの?

前述したとおり、政令指定都市では異なる区に事業所等を設けていれば、市民税、道府県民税がそれぞれの区ごとに課税されますし、同じ都道府県内の異なる市区町村に事業所等を設けていれば、やはり市区町村民税や都道府県民税がそれぞれ課税されます。

ここで疑問が生じるのは都道府県民税や市町村民税の二重課税にならないの?ということです。

これについて国は二重課税には当たらないとの判断を示しています(平成3年1月30日 広島地方裁判所 昭和63(行ウ)17 市民税県民税賦課決定処分取消請求事件)。

判決では、事業所等を有することはそれだけ多くの行政サービスを受けていること、法人と個人との間の相違、均等割額が定額であることなどを根拠としています。

3.必要経費にできるのか?

個人住民税については、事業所得の必要経費に算入しないもの(所得税法第45条第1項第4号)と規定されており、個人事業主の所得計算上、損金に算入できないものとされています。

事業所課税は、事業所を設けたことによって課税されるものであるため、事業所税と同様に事業に関連する必要経費として損金算入してもよいのではないかと個人的には思いますが、法人が事業所を設けたことによって課税される法人住民税が損金不算入とされていることとの整合性をとるとすれば、損金不算入の取扱いは認めざるをえないのかなとも思います。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。事業所課税は金額が少額ですので、納付書が送付され、内容がわからないまま納付されている方もいるかと思います。

また、事業所課税による税金の納付はしていないという個人事業主の方もいるかと思いますが、1月1日現在で事業所や店舗を有して事業を行っている個人事業主には課税要件を満たせば課される税金です。

納付していない個人事業主の方は、事業所や店舗所在の自治体に確認・申告をするなどの対応が必要となります。

藤岡 正光

公認会計士・税理士

東京をはじめ首都圏の店舗経営者に会計、税務サービスを提供しているほか、店舗経営に関する様々なアドバイスを行っている。
経営分析による改善活動を得意としている。

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