複数店舗経営の難しさ


店舗経営を事業とされている方の中には、数店舗を運営している方から数百店舗をチェーン経営している方まで規模や業態は様々ありますが、複数店舗を運営する難しさに直面した方は多くいます。

特に店舗責任者(店長)を誰に任せるか、複数店舗を経営する上で重要な問題です。

昨今の人手不足の中、スタッフのみならず店長を任せられる人材がいないと悩まれる経営者は多いものです。

そこで複数店舗を経営するためのポイントを挙げてみたいと思います。

1.複数店舗経営はなぜ難しいのか

店舗経営をする場合、通常は1店舗からスタートするでしょう。1店舗であれば常に店舗の状況を把握することができ、軌道に乗ってくればやりがいも増してきます。

1店舗目がうまくいけば2店舗目、3店舗目の出店も考えるようになってくると思います。

複数店舗を持つことは、スケールメリットを享受することが可能になりますし、経営に対するリスク分散を図ることができるからです。

しかし、複数店舗による経営は1店舗による経営とは異なるやり方があり、経営者の役割も変わってくるため、複数店舗経営を難しくさせています。

複数店舗経営を成功させるためのカギは、人材(特に店長)の育成と店舗マネジメントの標準化の2つに集約されるといっても過言ではありません。

2.複数店舗経営のカギとなる店長の役割とは

店長とは文字どおり、店舗という組織の長であり、経営者に代わってそのお店の運営に関する責任を負う立場にあります。店舗を複数展開していく上では、優秀な店長をいかにして採用し育てるかがポイントとなります。

“責任を負う”といえば、重いイメージがありますが、その責任の範囲については、業種や業態などによって異なってきます。

基本的に店長の責任とは、店舗業務の管理責任とスタッフなどの人のマネジメントにあるということができます。

これに業績に対する責任が加わってくると店長はより経営者に近い立場となり、責任の重さが増してきます。

経営者としては、店長にどこまでの業務責任を求め、権限移譲を進めるかが重要となります。

では店長が行うべき具体的業務は何があるのでしょうか。

2.1 勤怠管理

店長の役割の中で最も重要といってもいいのが勤怠管理です。一人で店舗を運営することは通常ありませんので、スタッフを雇用し複数人で運営していくことになります。

営業時間が長くなればなるほど、勤怠管理は難しくなります。営業時間内でいかにして効率的にスタッフを配置するか、いわゆるシフトの作成が勤怠管理の重要な業務の一つです。

人件費は店舗コストの中でも大きな割合を占めるため、効率的なシフトの作成は店舗利益に直結します。

2.2 スタッフ教育

店舗で働いている従業員は、店長、正社員、パート・アルバイトなどにかかわらず、お客様にとっては一従業員であり、同質のサービスを提供しなければなりません。

“アルバイトだから仕方がない”はお客様には通用しません。誰でも同質のサービスを提供するために、スタッフ教育は店長の重要な役割となります。

2.3 店舗営業の管理

店長といっても常に店舗にいるわけではありません。終日店舗にいることはありませんし、休日もあるでしょう。

そこで店長が必ず行わなければならないのは、店舗営業状況のチェックと出退勤時の指示伝達です。

常に店舗にいるわけではないことは触れましたが、その場合でも営業状況や問題点などがわかるように、日報などを活用してチェックしましょう。日報に記載する項目は、各店舗や業種業態によって異なるでしょうが、日々の業務のチェックや改善活動に役立てることができるような内容にすることが重要です。

2.4 本部(経営者)との橋渡し役

店舗数によって異なってきますが、数店舗経営の場合は、経営者が直接管理していることがありますし、数十店舗規模以上になると、複数店舗を統括して管理するいわゆるスーパーバイザーを配置している会社もあります。

複数店舗を経営している会社は、後述する店舗運営の標準化を進めています。その方が効率的ですし、規模のメリットを享受することができます。

その標準化を推進するのが、経営者でありスーパーバイザーということになります。店長は本部(社長)が定めた運営方針に従って店舗を運営することが求められますので、社長やスーパーバイザーとの間の報連相を綿密に実施し、それをスタッフと共有することが必要になってきます。

2.5 業績への責任について

一般的に店長には業績への責任を求めることは行われていません。店舗の業績に影響を与える要因は様々であり、店長がコントロールできる要因はあまりないと言えるからです。

もちろん先にあげた「勤怠管理」「スタッフ教育」「店舗管理」などができていなければ、業績に影響を与えることがありますが、業績に影響を与える要因の多くは、提供する商品やサービス、立地や天候、集客に直結する販促など店長のコントロールできないものです。

そのため、店長の評価にあたっては、店長の役割に応じたものとすべきなのです。

3.パート・アルバイトを積極的に活用しよう

店舗運営にとって、パート・アルバイトの雇用は避けて通れません。パート・アルバイトは低コストの労働力、雇用の調整弁として、店舗経営を行う事業者に活用されてきました。

しかし、近年の人材不足は深刻であり、ここ数年毎年最低賃金が引き上げられ、時給は上昇傾向にあります。

また、従業員の待遇改善や無期労働契約への転換が法制化されたことに伴い、パート・アルバイトの正社員化を図る企業が増えているなど、パート・アルバイトを取り巻く環境は変わってきています。

パート・アルバイトといっても、正社員と同じ業務を行っていることはよくあり、優秀な方も多くいます。

何らかの事情でパート・アルバイトという雇用形態で働いているだけの場合もありますので、優秀なパート・アルバイトを店長候補として育成し、複数店舗展開に備えることを検討しましょう。

4.店舗マネジメントの標準化

店舗管理業務には様々なものがあります。売上管理、納品管理、現金管理、勤怠管理、開店閉店業務、接客など、店舗オペレーションは多岐にわたります。

1店舗のみの場合は、経営者や店長の頭の中にあればいいのですが、これが複数店舗となると、経営者がマネジメントするために同じ店舗オペレーションにする必要が出てきます。

そのために行わなければならないのが全店統一のマニュアルの作成です。

店舗は接客業ですから、マニュアルにはないケースも発生しますが、基本的な仕組みと行動基準は必要です。

これは経営者がマネジメントするためのみならず、顧客満足度を向上させることにもつながるからです。

5.まとめ

繰り返しになりますが、複数店舗経営を成功させるためのカギは、人材(特に店長)の育成と店舗マネジメントの標準化です。

特に人材の育成はすぐにできるものではないため、計画的に実施する必要があります。

店舗が増えれば増えるほど、経営者の目が行き届きにくくなってきます。そのため、数店舗までは店長の育成、数十店舗規模になると、経営者に代わって各店舗を統括する幹部の育成というふうに、将来を見据えた人材育成を行っていきましょう。

藤岡 正光

公認会計士・税理士

東京をはじめ首都圏の店舗経営者に会計、税務サービスを提供しているほか、店舗経営に関する様々なアドバイスを行っている。
経営分析による改善活動を得意としている。

スポンサーリンク
スポンサーリンク