アパレルショップの社員割引の掟


BtoCビジネスを行っている会社では社員割引制度を導入しているところが数多くあります。主な目的は社員に対して行う福利厚生なのですが、別の目的で社員割引制度を導入していることもあります。アパレルショップでの社員割引制度がその典型的なものです。

1.アパレルショップの社員割引制度

多くのアパレルショップでは、自社商品購入のための社員割引制度を導入しています。これは社員に対する福利厚生制度の一環として導入しているのですが、もう一つマネキンとしての重要な役割も期待しています。

通常、アパレルショップでは数体のマネキンに服を着せてお客様にアピールしていますが、ショップで働く社員にも着てもらうことでアピールをしています。販売している商品をおしゃれに着こなしている社員を目にすることで売上アップにつながることもあります。

お客様は自分で試着して着た時の見た目やサイズ感などを確認しますが、社員が着ているのを見ることで、第三者目線でどう見えるかを感じ取ることもできます。

なんといっても働く社員にとっては、割引価格で自社商品を購入できることは大きなメリットでしょう。自分の好きなブランドで安く購入できることを目的に働く社員も多くいます。

また、アルバイトを探す人は社員割引制度があるかどうかも重要な要素となっています。

2.毎日自社商品を着なければならないの?

アパレルショップの社員は基本的には自社商品を着て販売することが多いようです。とはいっても全身自社商品でなければならないかというとほとんどの場合は1点着ればよいという場合が多いです。

そもそも全アイテムを扱っているわけではありませんし、お客様側も他社商品と合わせて着ることが多いので、組み合わせもアドバイスしながら接客することは重要です。

3.社員割引の注意点

社員にとっては、割引率は高ければ高いほどいいのですが、社員割引制度を導入するときに割引率の設定には注意が必要です。

3.1 社員割引の性質

社員割引とは、会社から自社社員という限定された人に対して値引き販売をすることになりますから、原則として会社から社員に対して割引額に相当する給与を支給したことと解されます。

したがって、社員にとっては現金で支給される給与とは別に、割引相当額が給与とされ、所得税の課税対象となります。

3.2 社員割引の税務上の取扱い

社員割引は原則として所得税の課税対象になるというでしたが、次の要件をみたせば課税対象としなくてもよいこととされています(所得税基本通達36‐23)。

① 値引販売に係る価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常他に販売する価額に比し著しく低い価額(通常他に販売する価額のおおむね70%未満)でないこと

② 値引率が、役員若しくは使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められていること

③ 値引販売をする商品等の数量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること

ただし①については例外があります。仕入価格以上かつ売価の70%以上であることが要件ですがアパレルショップの実情からするとシーズン末期には商品のシーズン持越しをしないために大幅な値引きを行ったり原価割れで販売することもあります。そのような場合には「仕入価格以上」という要件に該当しないことがありますが例外的に認められるものと解されます。

②については、一部の特定の者に対してのみ適用している場合は、対象者への利益供与とみなし、給与課税の対象にすることとしています。

③については、悪意のある社員が社員割引制度を利用して、大量に購入し転売をしたり、知人などに売ったりなどすることが起こりうるので、通常消費する程度以上の数量を超える場合は給与課税の対象になることとしています。

いずれも社員に対する福利厚生の趣旨を逸脱するものとして、課税対象にしているのです。

4.給与課税処理

社員割引で所得税の課税対象としなくてもよい要件はすでに記載したとおりです。

例えば30%の社員割引制度を導入していて他の条件も満たしている場合は、問題ありませんが、割引率をもっと高くしたいという場合もありますし、実際に30%以上の割引率の社員割引制度を導入している会社も多くあります。

その場合、社員割引が所得税の課税対象となることがありますが、会計処理は次の方法が考えられます。

(借)給与手当 XXX (貸)雑収入 XXX

また、給与計算上は、給与課税対象額を支給額に加算し、所得税計算を行うとともに、給与課税対象額を控除する処理を行います。

5.まとめ

アパレルショップにおける社員割引制度は、①会社にとって社員に対する福利厚生の一環と販売促進として、②社員にとって安く商品を購入できる、③お客様にとって商品購入の参考となりうる、などのメリットがあるので導入している会社が多くあります。

しかし、運用方法を間違えると社員の所得税の課税対象となってしまうこともあるため、導入にあたっては注意が必要です。

社員割引制度がどのような影響をもたらすかを検討したうえで導入するようにしましょう。

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