美容業の社会保険加入について


社会保険について未加入の法人が約80万社あると言われている中で、数年前から加入の勧奨が行われるようになっており、社会保険未加入の法人は、加入に向けての対策及び手続きを行う必要性に迫られています。

本来、法人は社会保険に加入しなければならないのですが、会社負担が重く経営に大きな影響を与えるため、未加入の法人が多いのが現状です。

しかし、年金財政がひっ迫する中でマイナンバー制度が導入され、国も社会保険加入の取り締まりを強化する方向に風向きが変わってきています。

調査によって社会保険未加入が発覚し、強制加入の状況になった場合、過去2年さかのぼって社会保険を徴収されることにもなりかねません。

特に美容業界は社会保険の加入率は低いとされており、加入率は20%とも言われています。

社会保険ってどうすればいいのという美容業経営者の方も多くいます。そこで美容業を行っている個人事業主や法人の社会保険の種類や経営に与える影響についてまとめてみます。以下では断りがない限り、狭義の社会保険を対象として記載します。

1.そもそも社会保険ってなに?

社会保険にはどのような種類があるのでしょうか。一般的に狭義の社会保険といえば、健康保険、厚生年金保険、介護保険のことをいいます。また、これに労働保険である雇用保険や労災保険を加えて社会保険という場合もあります。流石に労働保険に加入している法人は多いですが、狭義の社会保険に加入している法人は少ないのが美容業の現状です。

まず、社会保険適用対象事業所についてですが、法人は全て適用対象事業所となり、強制加入となります。

個人事業主の場合は、常時使用する従業員が5人未満の場合は加入義務はありません。つまり常時使用する従業員が5人以上の場合は社会保険適用事業所に該当し、社会保険への加入義務が生じるのですが、美容業は特定業種に該当するため、従業員が5人以上であっても社会保険加入は任意となります。

2.社会保険の加入条件

事業所が社会保険に加入すると、従業員は全て加入するのかというとそうではありません。社会保険には加入条件があり、条件を満たした従業員について加入できます。

加入条件は2つあり労働時間によるものと雇用契約期間によるものがあります。

2.1労働時間について

正規社員については、すべて加入義務があります。また、非正規社員の場合は、正規社員の週の所定労働時間の4分の3以上かつ月の所定労働日数の4分の3以上があることが加入条件となります。

2.2雇用契約期間

労働者の加入条件は、社会保険適用事業所に常時使用されていることですが、常時使用には雇用契約内容により解釈が異なってきます。

・日雇いの場合は1ヶ月以上引き続き雇用されるようになった時

・雇用契約が2ヶ月以内の場合、引き続き雇用されることとなった時

などの場合に常時使用に該当することとなります。

そのほか、季節的雇用者や臨時的雇用者についても雇用期間に応じて常時使用に該当する場合があります。

2.3短時間労働者

週の労働時間及び月の労働日数が正規社員の4分の3未満の場合は、短時間労働者となり原則として社会保険には加入できませんが、平成28年10月1日以降は一定の条件を満たす短時間労働者に限り、社会保険に加入できるようになりました。

一定の条件とは以下の要件をすべて満たす必要があります。

・厚生年金保険の被保険者が501人以上

・1年以上雇用される見込みであること

・週の所定労働時間が20時間以上

・賃金が月額88,000円以上

・学生ではない

・70歳(厚生年金保険)、75歳(健康保険)未満

さらに平成29年4月1日からは従業員が500人以下の会社でも労使で合意すれば社会保険に加入できるようになっています。

美容業の場合は、大手チェーン店を除き、従業員数が501人以上ということはほとんどないので、該当しない場合が多いと思われますが、今年より適用対象が広がっています。

3.美容業の社会保険の種類

美容業で加入できる社会保険はどのようなものがあるのでしょうか。協会けんぽに加入するのが一般的ですが、地域によっては美容業に特化した健康保険組合がありますので紹介します。

なお、加入にあたってはそれぞれの健保で加入資格要件が定められていますので、ホームページをご覧になるか、または問い合わせをするなどして確認することをお勧めします。

3.1 個人事業主

美容業での個人事業主の場合の社会保険は任意加入ですが、従業員の半数以上の同意があれば適用事業所になることができます。その場合は、従業員全員が加入する必要があります。実質的には全員の同意が必要になるケースが多いと思われます。

美容業では個人で国民健康保険に加入しているケースが多いのですが、社会保険適用事業所になった場合に加入可能な健康保険として、中小企業の会社員向けの協会けんぽと理美容師専用の組合である全日本理美容健康保険組合(以下、理美けんぽ)の2つがあります。個人事業主の場合、新規で理美けんぽには加入できませんが、協会けんぽでの加入実績があれば理美けんぽへ移行ができますので段階を踏んで加入することも検討しましょう。

また、東京又は大阪の個人経営の理美容室で働いている理美容師向けの健康保険として、東京美容国民健康保険組合東京理容国民健康保険組合大阪府整容国民健康保険組合があります。これは個人で加入できますし、東京又は大阪の理美容室で働いている方は国民健康保険よりもサービスも手厚いです。国民健康保険は前年度の所得に応じて保険料が変動しますが、保険料が一律で個人事業主自身も加入できるのが特徴です。

注意しなければならないのは、個人事業主で社会保険適用事業所となった場合でも、協会けんぽや理美けんぽでは個人事業主自身は社会保険に加入できないということです。個人事業主自身は、国民健康保険と国民年金に加入することになりますので、個人事業主自身が社会保険に加入したい場合は、法人化の検討が必要です。

3.2 法人

法人の場合、社会保険加入は強制ですので、協会けんぽ理美けんぽに加入することとなります。

また、西日本にある法人で、理美容業のみならず、ネイルサロンやエステサロンを経営している法人も加入可能なトータルビューティー健康保険組合が平成25年から運営を開始しています。保険料率は協会けんぽよりも低いですが、西日本以外の法人は紹介等がなければ加入することが難しく、協会けんぽの加入実績が必要であることや加入審査によっては申請しても加入できない場合があるなど、加入できる法人は限られます。

3.3 年金

年金は国民年金と厚生年金がありますが、協会けんぽ以外の場合は国民年金に加入することになります。

4.社会保険加入のメリット・デメリット

個人事業主の場合は任意のため、社会保険未加入の理美容室は多いのが現状です。

社会保険加入は費用負担が増す反面、従業員の採用や定着、理美容室の信用の高まりなどの面でメリットがあることも事実です。個人事業主でも社会保険加入によるメリットが考えられるのであれば、積極的に検討することも必要です。

法人の場合は強制加入ですが、前記のとおり加入率は低いのが現状です。しかし、近年の社会保険を取り巻く環境の変化がありますし、過去にさかのぼって多額の保険料の徴収を受けることは経営の継続に支障をきたすこともあり得ます。保険料を支払う余裕がない、従業員の入れ替わりが激しく社会保険に加入する意味がない、手続きが面倒、手取りが減るので社会保険に加入したくないと言われるなど、未加入の理由はいろいろあるでしょう。

しかし、社会保険未加入の場合、ハローワークで求人できない、求職者側も社会保険完備を条件としているなど、優秀な従業員を雇用することが重要な美容業では採用や定着で不利になるようなことは解消すべきと考えられますので、目先の社会保険料にとらわれず正しく社会保険に加入することをすすめます。

5.まとめ

個人事業主の場合は、業績や従業員の状況を見ながら社会保険の加入を検討すればいいのですが、法人の場合は社会保険への加入は必須です。

優秀な人が美容業界を目指すような環境づくりは、一経営者でできることではありませんが、美容業界の中でも低賃金、長時間労働、福利厚生もないヘアサロンよりもネイルサロンやエステなどに人材が流れている傾向にあります。また、多店舗展開する美容室が増えているにもかかわらず、美容師国家試験の合格者数は低下傾向にあり、人材確保が難しくなっています。

社会保険に加入することですべてが解決するわけではありませんが、結果として美容業界の発展、各理美容室の経営の改善に資するものとなるはずです。法令遵守の姿勢も経営者にとっては重要なことです。

健康保険については選択肢が複数ありますので、保険料のシュミレーションを行い、会社(事業所)の実情にあった社会保険制度の導入をお勧めします。

スポンサーリンク
スポンサーリンク



シェアする

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク