創業するときには設立費用や設備投資、当面の運転資金など資金が必要になります。自己資金が潤沢にあればいいのですが、イニシャルコストがあまりかからない場合や創業直後からある程度売上が見込まれる場合を除き、資金調達を考えなければなりません。しかし、資金調達といっても方法はいくつもあり、どの方法で資金調達を行ったらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこで、創業時の資金調達方法についていくつかご紹介しますので、ご自身にあった方法での資金調達方法を検討してはいかがでしょうか。
目次
1.資金調達の方法について
資金調達の方法には大きく分けて2つの方法があります。1つは資本金として出資を受け入れる方法で、もう1つは、借入れによる方法です。
2つの資金調達方法には、それぞれメリット、デメリットがありますので、自己資金の額、当面の収支計画、将来の事業計画などを勘案して、適した資金調達方法を選択する必要があります。
2.金融機関からの融資
2.1 日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の国民生活事業(旧国民政策金融公庫)では創業融資(「新創業融資制度」という。)を行っています。この創業融資は、事業を始める方又は税務申告が2期を経過していない事業者に対して、無担保・無保証で3,000万円(うち運転資金は1,500万円)まで利用できる制度となっており、多くの創業者が利用しています。
【メリット】
・無担保、無保証であること(代表者が連帯保証人となった場合には利率低減もできます)
・公的な制度融資よりも審査機関が短い
・公的な制度融資よりも自己資金要件が緩和されている
・民間金融機関よりも利率が低い
【デメリット】
・制度融資よりも金利が高くなる可能性がある
2.2 制度融資
制度融資とは信用保証協会による保証付きで民間金融機関から借入れを行う方法で、市区町村があっせんしてくれます。また、市区町村によっては利息の補助を受けられる場合がありますので、市区町村に確認してみましょう。
【メリット】
・創業前でも申し込みが可能
・無担保、無保証による借入が可能
・利率が低く市区町村によっては利息の補助制度がある
【デメリット】
・申し込みから借入の実行までに時間がかかる
2.3 マル経融資
マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資制度)は商工会議所の推薦で融資を受けられる制度です。利率が低いのが特徴ですが、創業時の融資ではなく少なくとも1年以上の実績が必要になりますので、業績が芳しくない企業は利用できませんし、商工会議所の経営指導を受けるなどの要件も必要になります。
【メリット】
・利率が低い
・無担保、無保証による借入が可能
【デメリット】
・創業時には利用できない
・商工会議所の経営指導を受けなければならないなど利用するための要件がある
2.4 民間金融機関
銀行や信用金庫などの融資による資金調達を行う方法です。創業時に民間金融機関からの融資を受けることはハードルが高く難しいですが、地方銀行や信用金庫は地元密着で融資に積極的なところもあるので、相談してみる価値はあります。
【メリット】
・メインバンクとしてビジネス上の様々な情報提供を受けることができる
【デメリット】
・担保や連帯保証人を求められる
・創業融資や制度融資よりも利率が高い
3.補助金・助成金
3.1 創業補助金
創業補助金とは、毎年春先に新たに新たに事業を開始する事業者を対象に対して、創業等に要する経費の一部を助成するもので、200万円以内で補助率は3分の2となっています。
公募時期が毎年決まっていますので、創業補助金を利用しようと考える方は、会社の設立時期に注意する必要があります。また、認定支援機関の支援を受けなければならないので、計画的に実行する必要があります。
なお、平成28年度の創業補助金は応募総数2,866件に対して、採択数は136件(4.7%)にとどまり前年度から大幅に採択率が低下しましたので、創業補助金ありきの資金調達計画は難しいものと考えてください。
【メリット】
・原則返済の必要がない
【デメリット】
・公募時期が決まっている
・認定支援機関の支援を受けなければならない
・直近の採択率が大幅に低下し、採択の可能性が低い
・補助金を受けるまでに時間がかかるため創業資金には向かない
3.2 各種補助金・助成金
創業補助金以外に国や各地方自治体、各種団体などが、様々な補助金・助成金制度を実施しています。補助金・助成金は星の数ほどあるといわれており、自社で活用できる補助金・助成金があるかどうかを適時にチェックすることは非常に困難です。利用を考えている方は、補助金・助成金に強い専門家に相談するなどが必要です。
【メリット】
・原則返済の必要がない
【デメリット】
・公募時期が決まっている
・補助金・助成金を受けるまで時間がかかる
・膨大な申請書類の作成に時間がかかる
・補助金・助成金によっては認定支援機関の支援が必要になる
4.協力会社等からの出資又は借入
今後ビジネスを行っていくうえで、協力関係にある取引先や懇意にしている会社からの出資又は借入によって資金調達を行う方法です。
【メリット】
・取引上の関係にある会社であれば円滑な取引関係の構築が見込まれる
【デメリット】
・出資の場合、議決権の割合によっては経営権を握られる
・借入の場合、金利負担が重くなる場合がある
5.親族や友人からの出資又は借入
親族や友人から出資又は借入によって資金調達を行う方法です。親族や友人は懇意の間柄とはいえ、後々トラブルになる可能性もあるので、安易に選択はしない方がよいでしょう。
【メリット】
・議決権の過半数を超えない限り経営に対する自由度は高い
・他の借入よりも借入条件を有利にしやすい
【デメリット】
・親族や友人との関係が悪化する可能性がある
6.ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャー企業などへの投資をビジネスとしているベンチャーキャピタルからの出資を受け入れる方法です。将来株式上場を目指している場合によく行われる資金調達方法ですので、ビジネスの新規性や将来性など上場の可能性が審査されます。
【メリット】
・上場に向けての経営のアドバイスを受けることができる
・顧客や取引先の紹介を受けることが期待できる
【デメリット】
・起業者の持株比率が低下する。
・株式上場など今後の資本戦略が限定される
7.クラウドファンディング
近年注目を浴びている資金調達方法です。クラウドファンディングとは資金調達をしたい人と資金を投資したい人とをインターネット上のプラットフォームでつなぐ仕組みのことです。クラウドファンディングには、株式型、貸付型、寄付型、購入型などの取引形態があります。不特定多数の人から資金を募るわけですから、ビジネスの計画性と魅力をうまくインターネット上で伝えるテクニックが必要になりますし、使うサイトの選択も重要です。
【メリット】
・取引形態によっては返済不要
・ビジネスの魅力度によっては大きな資金調達ができる可能性がある
・広告宣伝効果がある
【デメリット】
・必ずしも資金調達がうまくいくとは限らない
・知的財産権の保護を事前に行っておかなければならないケースがある
8.まとめ
このように創業時の資金調達方法は様々ありますが、一般的には創業融資を利用することが多いです。しかし自社の事業計画、自己資金の額を勘案して、設備投資資金や運転資金として資金調達がどのくらい必要か綿密に計画をたてて最適な方法を選択することが重要です。

公認会計士・税理士
東京をはじめ首都圏の店舗経営者に会計、税務サービスを提供しているほか、店舗経営に関する様々なアドバイスを行っている。
経営分析による改善活動を得意としている。